自閉症ってなあに?(2)

自閉症ってなあに?(1).の解説編です。

自閉症の診断と言うのは児童精神科医がお子さんの行動を観察したり、ご両親から聞き取ったりし、場合によっては臨床心理士によってテストをしたりして・・・要するに外側に現れている行動から総合的に診断しています。(でもこの児童精神科医というのは数が少なくて診断を受けられた子はラッキー、診断受けられないで大きくなってしまう子もたくさんいます。)

保育園で保育士が「なんか変わってるな」と障害の存在に気づき始めるのは早いケースで1歳過ぎ。遅くても2歳児くらいにはなんとなくほかの子との違いが際立ってきます。それが自閉症と判断できる保育士は少ないのが現状ですが・・・。そこで何が障害がない子と違うのかというと先にあげた障害の三つ組から来るコミュニケーションの取り難さ(言葉での指示理解が苦手)、こだわり(好きなもの・・・車や電車、特にそのタイヤ部分に惹かれる子が多いです。ドアの開け閉め、物の位置が同じでないとだめなどその子によって様々です。)などがあります。また2歳児くらいになると「また今度」「後で」など次の行動への見通しが持てるようになるのですが、自閉症の子はそれがなかなか持ちにくいようです。

そのような特徴のせいで皆と同じ行動が取れないことがあります。また、好きな活動が終わりそうになったり、好きな活動の前に何かやってからなどと指示されると「もうその活動がやれない」と思い込み怒ったりパニックになります。おもちゃを貸し借りすることもできない子が多いです・・・・・どうですか?これは本人とっても大変、もちろんまわりも大変ですね。

前のコメントで自閉症は治らない、と書きました。でも、適切な治療によって社会のルールを身につけたり、こだわりを軽くすることはできます。それはできるだけ早いほうが本人もまわりも結果的には楽です。軽度の自閉症でなんか変と思いながら何も手を打たないで大きくなっていくと、周りとのコミュニケーションが取れず仲間はずれにされたり、就職して仕事をするようになると上手くいかなかったりします。お子さんの障害を認めるのは本当につらいですが、「なんか変」と思ったら保育園の先生や保健師さんに相談してください。また保育園の先生は「お宅のお子さん自閉症じゃない?」などと決め付ける様なことは言わないでください。それはドクターが判断することです。でも、そのお子さんの行動は隠さず客観的に保護者へ伝えてください。保護者の方が集団でのわが子の現実を知らないとそのままどんどん大きくなっていってしまいます。難しいことですが、うまく伝える努力は必要ではないでしょうか。

自閉症ってなあに?(1)

私がだいぶ前からお世話になっている障害児教育の掲示板がある→ @nifty:障害児教育フォーラム.

のあのあとは別ハンドルで結構発言しているのだが、今日は会員限定のところに書いた自閉症についての発言をここにコピペしてみようと思う。
始めに書いておきますが昔、自閉症は母親の育て方が悪いなどといわれていましたが、今は脳のごく小さな器質的障害であると医学的にいわれています。
また、ひきこもりと同義に考えていらっしゃる方もいますが、引きこもりは直ります。でも自閉症は症状の軽減はできますが治りません。
以下の文章は療育に携わったことのない人にとっては難しいと思いますが、子どもに関わる仕事の方にはぜひ頑張って読んでいただきたいなと願っています。

自閉症スペクトラムと言う考え方
そもそも、自閉症スペクトラムという考えが日本でメジャーデビュー(?)したのはイギリスはローナ・ウィング女史の「自閉症スペクトル」(1998年・東京書籍刊)が邦訳されたことによるのではなかったかと思います。
この発言をするにあたってざっと読み返してみました。
自閉症スペクトラムとは非常に簡単に言えば障害の三つ組が全部・あるいは一部、その人の行動に存在するか否かに集約されます。

三つ組
社会的相互交渉の障害
コミュニケーションの障害
想像性の障害

スタートはここからで、この三つ組がそろうと典型的な自閉症(カナー型)二つないし一つの時は広汎性発達障害、非定型自閉症という診断名が付くことが多いようです。
また、この三つ組は重度の知的障害から平均よりも上のIQのいずれの知的レベルでも起こり、ボーダーラインより上になると高機能自閉症という診断名をつけることが多いようです。
また、高機能自閉症で言葉の遅れがないタイプをアスペルガー症候群と呼びますが、コレに関してはカナー型自閉症とは区別しようという考え方もあるようです。(この辺のいきさつ誰か知りません??)

援助する側としては、これらの診断名はあくまでも自閉症スペクトラムの中の特徴ととらえ、自閉症特有の症状の有無や強弱、得手不得手を確かめつつ、個別にアプローチしていくのが望ましいのではと思います。
アプローチ方法に関しては、代表的なものとしてTEACCHプログラムがありますが、往々にして彼らの意思伝達手段としてではなくこちら側の要求や指示を伝える手段に使われがちのようです。使う側はあくまでも彼らが生活しやすくなる手段や方法であるということを忘れてはなりません。
認知発達を段階的に促していく点においてはTEACCHのほかに太田昌孝先生による「大田stage」なるものもあります。TEACCHの「発達単元」の225課題が視覚運動系のものが多いのに対し、大田stageのstage別発達課題は言語系が多いのが特徴で、なおかつ日本で作られたものということでより実態・必要に沿いやすいのではと思います。
また、感覚異常のあるお子さんに対しては「感覚統合(SI)」は(有効でないという意見も多いようですが)この考え方をもとに運動活動を呈示していくと徐々にではありますが改善していくことがあります。
その他、応用行動分析などの考え方もありますが私が実践したことないのでコメントは差し控えます。

ここに書いてきた事柄だけでも、自閉症を知らない人から見れば十分複雑で難しい内容だと思います。また、これらのことがわかっていても実際にやるとなるとそれもまた療育者個々の能力やキャパシティ、おかれている立場や条件で関わり方はすごく違ってしまうと思います。
それだけ難しい障害であり、なかなか一般に理解されにくいものあるということなのでしょう。

私自身として目指しているのは「いかに一般のお子さんの中で自閉症スペクトラムのお子さんが生活していけるか」「自閉症を知らない親御さんやスタッフにどうやって理解を促していくか」ということです。要するに専門家と親御さんの間にいる人、というスタンスでいきたいなと。
<以下略>

ってわけで、ひとくちで自閉症といってもそのカテゴリーの下にはいろーんな種類があるわけです。
しかも、療育に携わったことのない方がこの文章をたぶん一回読んだだけではわからないということでも証明されますが、非常に理解されにくい障害です。
そのせいでつらい思いをしている親子が日本にどれだけいることか・・・・。今回はちょっと難しくせまってみましたが(笑)次回簡単な解説編をアップしますね。興味のある方は気長にお待ちくださいね。

障害のある子どもたち

突然ですが保育所・保育園は厚生労働省管轄の福祉施設です。(ちなみに幼稚園は文部科学省管轄の教育施設です)そういった事情から障害児の受け入れが幼稚園と比べて多いです。たいていは自治体の健診や発達相談などで保健師さんがピックアップしてご紹介、または療育施設(心身障害児通園施設など)からというお子さんもいます。そういったお子さんのお母さんはもう障害受容がある程度できているか、少なくとも問題意識(うちの子なんか他の子と違うなぁ・・・ってところでしょうか)はあるので、私たちは専門家のアドバイスを受けながら親子の初めての社会デビューを応援する形になります。

大変なのはご両親が障害の存在に気がついていないケースです。これは軽度の自閉症に多いケースです。健診でも保健師が気が付きにくい障害の一つです。ぶっちゃけ、保育士は担当して何日もたたないうちに(ベテランになると面接した時に)障害があるのではないかと気がつきます。そういったお子さんは特定のこだわりがあったり、先生やお友達とのコミュニケーションが上手くいかなかったりして、保育園生活でとっても苦労しています。保育士も手をかけてフォローしたいのは山々ですが、障害に気がついていないご両親のお子さんは当然ながら障害児に付く加配保育士は付きません。かわいそうですがむりやり他の子のペースに合わせる羽目になります。

また、お母さんに気がついてもらうために、傷つけないよう言葉を選びつつ、生活の中で上手くいってない事柄を伝えていかなければなりません。これが一番大変なのです。子どもの悪い部分を言われていい気持ちのする親はいません。保育士としては「子どものためには気がついてもらいたい、でもお母さんとの関係を崩したくはない」と本当に悩むところです。でも私は心を鬼にしてお子さんのために事実をかくさずお話しすることをモットーにしています。障害に気づいた時どうやってもご両親は傷つき落ち込みます。大事なのはその後の見通しを伝えバックアップをしていく保育士の姿勢だと思っています。

ところで保育士でも障害児に詳しい人とそうでない人がいます。資格を取るカリキュラムの中に障害児保育の単位はありますが、理論だけで実践はほとんど積めないのが実情です。専門性の向上が叫ばれて久しい保育士ですが卒後教育もなかなか受けられないので、自閉症のような対応の難しい障害はなかなかご両親に的確なアドバイスができないスタッフのほうが多いのもまた事実です。専門性の高い療育施設の職員や作業療法士、保健師などのアドバイスが受けられるシステム作りができるといいのですが・・・・。

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